なぜ今、IT資産処分が注目されているのか?
2020年以降、多くの企業が取り組んできた「働き方改革」。その象徴ともいえるのが、テレワークや在宅勤務の急速な拡大です。ノートパソコンやモバイルルーターといった業務用端末を社員に貸与し、社外からでも業務が遂行できる環境整備が進んだ結果、企業のIT資産の保有台数は以前にも増して多様化・分散化しています。
しかしその一方で、テレワーク端末が「更新・返却・退職」などによって使われなくなったタイミングで、その後の処分や回収フローが曖昧なまま放置されるという問題が増加しています。回収漏れのPC、放置されたUSBメモリ、誰の管理下にもないスマートフォン。これらはすべて、情報漏洩やコンプライアンス違反のリスクに直結する重大な懸念事項です。
本記事では、働き方改革が企業のIT資産運用にどのような影響を及ぼし、なぜ資産の「処分」や「回収」が重要な経営課題になっているのかを解説します。テレワークが当たり前になった今だからこそ見直したい、IT資産の最終処理に関する考え方と実務対応を、わかりやすくご紹介します。
テレワークの普及で増えるIT資産と“管理漏れ”の現実
働き方改革の一環として推進されたテレワークは、多くの企業で「常態化」しつつあります。社外で業務を行うためには、ノートPC、スマートフォン、タブレット、Wi-Fiルーターといったモバイル端末の支給が不可欠です。その結果、企業の保有するIT資産の数は急増し、それらが一時的にでも社外で使用される場面が格段に増えました。
支給端末は「使い終わったらどうなるのか?」
テレワーク用端末は、社員の退職や部署異動、機器の更新などによって「使われなくなる」タイミングが必ず訪れます。問題はその後──誰が、いつ、どのようにしてその機器を回収し、処分しているのか。管理責任が明確になっていない場合、以下のような“管理漏れ”が発生するリスクがあります:
- 退職者がPCやスマホを社外に持ち出したまま返却しない
- 使用済みのHDDやUSBメモリが倉庫や自宅に放置される
- IT部門の台帳と実際の資産数が一致しない
- 一部の端末が回収されず、誰の管理下にもない状態になる
このような状況を放置すれば、情報漏洩・資産損失・監査対応不備といったリスクが現実のものとなります。
管理台帳の限界と「物理的回収」の難しさ
多くの企業ではIT資産をExcelや社内システムで管理していますが、運用実態との乖離が問題になっています。たとえば、テレワーク中の端末が誰の手元にあるのか、いつ回収されたのか、データは削除されたのか──紙ベースや非連動のシステムでは正確に把握しきれないのが現状です。
さらに、支店・在宅・地方拠点に分散した端末の「回収作業そのもの」が負荷となり、IT部門が日常業務と両立できずに回収・廃棄が後回しになるケースも珍しくありません。
つまり、テレワークによって利便性は高まったものの、資産管理と最終的な回収・処分の実務が追いついていないというのが、今の多くの企業の実態です。
放置された端末がもたらす3つの重大リスク
テレワークの普及によって増加した業務用端末は、利用が終わった後の「回収・廃棄フェーズ」において適切に管理されないまま放置されるリスクをはらんでいます。こうした端末が企業にもたらすリスクは、単なる「在庫の管理漏れ」にとどまりません。以下に、放置されたIT資産が引き起こす可能性のある3つの重大なリスクをご紹介します。
1. 情報漏洩リスク
最大のリスクは、端末に残された機密情報の漏洩です。特にPCやスマートフォンには、業務資料、顧客情報、クラウドサービスのログイン情報などが保存されており、初期化されていないまま第三者の手に渡れば、重大な情報漏洩事故につながる恐れがあります。
たとえば、廃棄予定だったパソコンがフリマアプリで不正転売された結果、内部に残っていた社内機密がSNSで拡散され、企業の信用を大きく損なう事例も現実に発生しています。
2. コンプライアンス・監査対応リスク
放置された端末の存在が明らかになるのは、監査やセキュリティ点検のタイミングであることが多く、台帳との不一致や証明書の未取得が判明すると、ISMS、Pマーク、財務監査等の認証や指摘事項として企業に跳ね返ってきます。
特に情報セキュリティの国際規格に準拠している企業では、IT資産の処分履歴(データ消去の証明書・回収記録)までが審査対象となり、不備があると内部統制上の問題として改善を求められます。
3. コスト・損失リスク
適切に回収・再利用・売却されなかったIT資産は、企業にとって「活かせたはずの資産の損失」です。まだ利用可能な端末を廃棄することで、新たな機器購入コストがかさみ、資産効率が低下します。
さらに、廃棄を委託した業者が不正処分をしていた場合、処分費用の支払いに加え、訴訟や行政処分といった二次的損害も想定しなければなりません。
このように、テレワーク端末の放置は「業務の盲点」から「企業存続に関わるリスク」へと発展しうる深刻な問題です。使用後の管理と処分こそが、IT資産管理の最後の砦といえるでしょう。
IT資産の“処分計画”は働き方改革の一部である
働き方改革というと、「労働時間の短縮」や「柔軟な勤務制度の導入」ばかりが注目されがちですが、それを実現するためのインフラであるIT資産の運用・管理も本質的な改革の一部です。そしてその終着点こそが「適切な処分」であり、これを含めてはじめて働き方改革が“完了”したと言えるのです。
使用から廃棄までが1つのITライフサイクル
IT資産には「導入 → 利用 → メンテナンス → 廃棄」のライフサイクルがあります。テレワークのために導入したPCやスマートデバイスも、やがて役目を終える日がきます。そのときに廃棄・回収の計画が整っていなければ、企業全体のITガバナンスは機能不全に陥ります。
特に近年では、クラウドやMDM(モバイルデバイス管理)を活用した運用が進む一方で、物理的な端末の最終処理だけは属人的な手作業に頼っている企業が少なくありません。
「導入時」から処分を見据えた設計を
働き方改革におけるIT資産管理では、端末を配備する段階で「処分までの流れ」を設計しておくことが重要です。例えば以下のような仕組みが理想です:
- 社内台帳とMDMを連携し、リアルタイムで資産を管理
- 回収期限・更新スケジュールを明文化
- 処分対象にフラグを立て、自動的に担当部署に通知
- 処分業者との連携体制を整備し、回収から証明書発行までを定型化
こうした仕組みがあれば、「使ったら終わり」ではなく、「処分までが業務の一環」として認識され、端末の放置や処分漏れといったリスクを大幅に減らすことができます。
処分まで設計することが「改革」
テレワークを支えるIT資産は、企業にとって“働き方そのもの”を具現化する重要な道具です。それを最後まで適切に管理・廃棄することは、社員への安心提供、業務効率化、法令遵守のいずれにおいても不可欠です。
つまり、IT資産の処分計画は、働き方改革の「周辺業務」ではなく、「中核業務の一部」であると捉えることが、これからの企業経営に求められます。
まとめ|“最後のひと手間”が企業を守る
テレワークの拡大によって、企業が保有するIT資産はますます多様化・分散化しています。働き方改革は制度導入だけで完結するものではなく、その変化を支えるIT資産の「導入から廃棄まで」を通した管理体制が整ってこそ、初めて機能する改革です。
特に「処分」という最終工程は、社内で軽視されがちですが、ここをおろそかにすると情報漏洩、資産損失、監査対応不備といったリスクが企業全体に跳ね返ってきます。
だからこそ、使用後の端末を「安全に、確実に、証跡を残して処分する」ための“最後のひと手間”を、組織的な仕組みとして取り入れることが必要です。
テレワークを前提としたこれからの時代において、IT資産処分の最適化は、企業の信頼を守り、改革を完遂するための最後のピースです。本記事をきっかけに、自社の処分計画をぜひ見直してみてください。
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