最終更新:2026年10月21日
モバイルバッテリーは、不燃ごみにも可燃ごみにも出せません。中のリチウムイオン電池が収集車やごみ処理施設で押しつぶされると発火するためで、消防庁の集計では、2025年にリチウムイオン電池等から出火した火災は1,297件と過去最多で、製品別ではモバイルバッテリーが482件と最も多くなっています。環境省の調査でも、2025年度に全国の市町村のごみ処理で起きたリチウムイオン電池等による発煙・発火は39,282件にのぼります。
一方で「どこに持っていけばいいのか」は分かりにくいのが実情です。家電量販店の回収ボックス(JBRC)はメーカーによって受け付けてもらえないことがあり、自治体の回収も市区町村ごとに方法が違います。さらに2026年4月には改正資源有効利用促進法が施行され、メーカー自身による回収も始まりました。
本記事では、個人は「JBRC回収ボックス → 自治体の拠点回収 → メーカー回収」の順に確認する、法人は産業廃棄物として許可業者に委託する(パソコン処分業者にまとめて依頼できる)という結論を先に示したうえで、捨てる前の絶縁手順と、膨張・発熱しているときの対処を解説します。
1. モバイルバッテリーを家庭ごみに出してはいけない理由
モバイルバッテリーの中身はリチウムイオン電池です。リチウムイオン電池は衝撃や圧力で内部短絡を起こすと、数百度まで発熱して発火します(熱暴走)。ごみ収集車の圧縮装置や処理施設の破砕機は、まさにこの「押しつぶす」工程なので、混入すると火災の原因になります。
| 公表元 | 内容 |
|---|---|
| 消防庁(2026年3月公表) | 2025年にリチウムイオン電池等から出火した火災は1,297件。2022年601件、2023年739件、2024年982件と毎年増加。製品別ではモバイルバッテリーが482件で最多(前年290件から約7割増)、次いで携帯電話機93件、電動工具86件 |
| 環境省(2025年度調査) | 全国の市町村のごみ処理で発生したリチウムイオン電池等による発煙・発火は39,282件(前年度から1万6,000件以上増加)。うち職員や消防隊が消火した火災事故等は9,456件。発生場所の大半は破砕・選別・圧縮を行う再資源化施設で、発生品目はモバイルバッテリーが最多 |
こうした背景から、ほとんどの自治体がモバイルバッテリーを「収集しないごみ」に指定しています。可燃・不燃・資源のどの袋に入れても違反になり、収集車の火災で周囲に被害が出れば損害賠償を求められることもあります。
2. 個人の捨て方|3つの回収ルートの使い分け
個人が使ったモバイルバッテリーの処分先は、次の3つです。上から順に確認してください。
| ルート | 場所 | 受け付ける条件 | 費用 |
|---|---|---|---|
| ① JBRC回収ボックス | 家電量販店・ホームセンターなどの協力店、協力自治体の施設 | JBRC会員企業の製品で、外装に膨張・破損・液もれがないもの。非会員メーカー品・メーカー不明品は対象外 | 無料 |
| ② 自治体の拠点回収 | 区役所・市役所、清掃事務所、リサイクルセンターなどの回収ボックス、または収集日の別出し | 市区町村ごとに異なる。JBRC非会員品を受け付ける自治体もあれば、受け付けない自治体もある | 無料(自治体による) |
| ③ メーカー回収 | メーカーの窓口(2026年4月以降、対象メーカーは自主回収を実施) | 自社製品。方法はメーカーごとに異なる | 無料が原則 |
① JBRC(一般社団法人JBRC)の回収ボックス
JBRCは小型充電式電池のメーカー団体で、全国の協力店・協力自治体に回収ボックスを置いています。回収対象はJBRC会員企業製のリチウムイオン電池・ニッケル水素電池・ニカド電池で、モバイルバッテリーは「スマートフォンなどへの充電を主な機能とする小型充電式電池を組み込んだ製品」が対象です。会員企業外の製品、外装が膨張・破損・液もれしたもの、分解したもの、ハードケースに入っていないラミネート型の電池は回収できません。
持ち込む前にJBRCの公式サイトで「協力店・協力自治体検索」を使い、近くの回収場所と、自分のバッテリーのメーカーが会員かどうかを確認してください。店舗によっては店員に声をかけて渡す方式で、回収ボックスがレジ裏にあることもあります。
② 自治体の拠点回収・別出し
JBRCで受け付けてもらえない製品(海外の無名ブランド品、メーカー不明品など)は、自治体の回収を確認します。方法は市区町村ごとに違い、庁舎や清掃事務所の回収ボックス、収集日に透明袋で「別出し」、電話予約で引き取りなどがあります。東京23区では、2025年から2026年にかけて専用の回収ボックスや拠点回収を始める区が増えています。お住まいの自治体のごみ分別ページで「モバイルバッテリー」「充電式電池」を検索してください。
③ メーカー回収
2026年4月1日に施行された改正資源有効利用促進法により、モバイルバッテリーは「指定再資源化製品」に加わり、一定規模以上のメーカー・輸入販売事業者には自主回収と再資源化が求められるようになりました(6章)。大手ブランドは自社サイトに回収の案内を設けています。購入したブランドのサイトで「回収」「リサイクル」を確認してください。
3. 捨てる前の準備|放電と端子の絶縁
どのルートで出す場合も、回収中の短絡(ショート)を防ぐため、次の準備をしてから出します。
- できるだけ放電する:残量が少ないほど発火時のエネルギーが小さくなります。充電せずに使い切るのが基本です。無理に放電し続ける必要はありません。
- 端子を絶縁テープで覆う:USB端子・Type-C端子・Lightning端子など、金属が露出している部分すべてにビニールテープやセロハンテープを貼ります。JBRCも回収時の安全処置として端子の絶縁を求めています。
- ケーブルは外す:ケーブルが付いたままだと他の電池と接触して短絡の原因になります。ケーブルは別途、小型家電や不燃ごみのルールに従って処分します。
- 1個ずつ袋に入れる:複数まとめる場合は、個別にポリ袋やジッパー付き袋に入れて金属同士が触れないようにします。
- 分解しない:外装を開けると電池がむき出しになり、JBRCでも自治体でも受け付けてもらえなくなります。
4. 膨張・発熱・破損しているときの対処
外装が膨らんでいる、触ると熱い、落として変形した、水に濡れた。こうしたモバイルバッテリーはJBRCの回収ボックスに入れてはいけません(回収対象外)。次の手順で扱ってください。
- 充電・使用を直ちにやめる:膨張は内部でガスが発生している状態です。無理に押し込んだり、穴を開けたりしないでください。
- 燃えないものの上に置く:金属製のトレイや耐熱容器、または土や砂を入れた容器に置き、可燃物から離します。直射日光が当たる車内や窓際には置きません。
- 端子を絶縁する:3章と同じく、テープで端子を覆います。
- 自治体の清掃担当またはメーカーに相談する:膨張品の受け入れ方法は自治体ごとに違います。清掃事務所に直接持ち込む方式が多く、郵送は受け付けていません。
- 発煙・発火したら:大量の水をかけて冷やし続けるのが基本です。消えたように見えても再発火することがあるため、水を張ったバケツに沈めるか、消防に連絡します。
法人で膨張したバッテリーが見つかった場合は、社内で保管し続けず、産業廃棄物の収集運搬業者(5章)に状態を伝えたうえで早めに引き渡してください。
5. 法人の処分方法|社用モバイルバッテリーは産業廃棄物
会社で購入・支給したモバイルバッテリーは、個人と同じルートでは処分できません。事業活動から出た廃棄物は事業系廃棄物となり、モバイルバッテリーのような金属・プラスチック製品は産業廃棄物(金属くず・廃プラスチック類)に当たります。自治体の回収ボックスやJBRCの店頭回収は、家庭から出るものを前提にしています。
法人の処分方法は次の2つです。
| 方法 | 向いているケース | 費用・手間 |
|---|---|---|
| 産業廃棄物の収集運搬業許可を持つ業者に委託する | 数が多い、他の機器(パソコン・スマホ・UPS)と一緒に処分したい | 業者による。パソコン処分業者ならバッテリー類は無料回収の対象になることが多い。マニフェスト(産業廃棄物管理票)の交付を受ける |
| JBRCの事業者向け回収を利用する | JBRC会員企業製のバッテリーだけをまとめて出したい | JBRCは産業廃棄物広域認定を取得しており、排出事業者として登録のうえ回収を依頼できる。会員企業外品・膨張品は対象外 |
実務上は、パソコンやスマホの入れ替え・処分のタイミングで、社内に溜まったモバイルバッテリー・予備バッテリー・UPSをまとめて引き渡すのが最も手間がかかりません。株式会社HAKUでは、パソコンの回収とあわせてバッテリー類(モバイルバッテリー、UPS、ノートPCの予備バッテリーなど)を無料でお引き取りしています。産業廃棄物収集運搬業の許可(東京都 第01300170741号)を持ち、製品受領証明書を発行しますので、処分の記録も残せます。
出張回収の無料条件は地域ごとの台数で決まります(千代田区・中央区・港区・台東区・文京区・渋谷区・新宿区は1台から無料)。条件と対応地域は料金・台数条件の一覧をご確認ください。リチウムイオン電池は運送会社ごとに輸送条件が定められているため、郵送をご希望の場合は事前にお問い合わせください。
6. 2026年4月施行|改正資源有効利用促進法で何が変わったか
2026年4月1日に改正資源有効利用促進法が施行され、「指定再資源化製品」に電源装置(モバイルバッテリー)、携帯電話用装置(スマートフォンなど)、加熱式たばこデバイスの3品目が追加されました。指定再資源化製品のメーカー・輸入販売事業者には、自社製品の自主回収と再資源化に取り組むことが求められ、高い回収目標を掲げて認定を受けた事業者は、廃棄物処理法の業許可なしに回収できる特例を受けられます。
消費者側の変化としては、これまで「JBRC会員でないから回収ボックスに入れられない」とされていた製品も、メーカー自身の回収窓口が整備されていくことになります。ただし、すべてのメーカーが対象になるわけではなく、海外の小規模ブランドや販売終了したブランドの製品は引き続き自治体のルートが受け皿です。
あわせて環境省は、市町村に対してリチウム蓄電池等の分別回収と処理施設での発火対策を進めるよう通知し、2025年から2026年にかけて専用回収ボックスの設置や拠点回収を始める自治体が増えています。「数年前は捨て方が分からなかった」製品が、ようやく捨てやすくなりつつある段階です。
まとめ
- モバイルバッテリーは可燃・不燃ごみに出せない。2025年のリチウムイオン電池火災は1,297件(モバイルバッテリー482件)で過去最多。
- 個人は「JBRC回収ボックス → 自治体の拠点回収 → メーカー回収」の順に確認する。JBRCは会員企業製で外装に異常がないものだけが対象。
- 出す前に放電し、端子を絶縁テープで覆い、1個ずつ袋に入れる。分解はしない。
- 膨張・発熱・破損しているものは回収ボックスに入れず、燃えないものの上で保管して自治体の清掃担当かメーカーに相談する。
- 法人の社用モバイルバッテリーは産業廃棄物。パソコンやスマホの処分とあわせて許可業者にまとめて引き渡すのが最も手間がかからない。
- 2026年4月の改正資源有効利用促進法でメーカーの自主回収が始まった。対象外のブランド品は引き続き自治体が受け皿。
参考資料:消防庁「リチウムイオン電池等から出火した火災の発生状況(令和7年)」(2026年3月26日)/環境省「リチウムイオン電池等に起因する廃棄物処理時の火災事故等の調査結果(令和7年度)」/一般社団法人JBRC「排出方法(回収対象・対象外)」/経済産業省「資源の有効な利用の促進に関する法律」改正(2026年4月1日施行)。数値は各公表時点のものです。
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