最終更新:2026年10月16日(NIST・ADEC・JIPDECの公式情報の確認日)
ITAD(アイタッド)とは、IT Asset Disposition(IT資産の処分)の略です。企業などで使い終わったパソコン・サーバー・スマートフォンなどのIT機器を回収し、仕分けとデータ消去を行ったうえで、使えるものは中古機器として再利用し、使えないものは部品・素材ごとに再資源化する一連のプロセスを指します。
単に「捨てる」こととの違いは、データを確実に消すこと、できるだけ再利用すること、そしてその記録を残すことまでを1つの業務として扱う点にあります。情報漏えい対策と資源の有効活用を同時に進められるため、法人のIT機器の出口管理として使われています。
ITADとは
ITADは「IT Asset Disposition」の頭文字をとった言葉で、日本語では「IT資産の処分」「IT機器の適正処分」などと訳されます。対象になるのは、企業や官公庁、学校などで使われたIT機器全般です。
- パソコン(デスクトップ・ノート・一体型)、モニター
- サーバー、NAS・ストレージ、ネットワーク機器
- スマートフォン、タブレット
- HDD・SSD、USBメモリ、磁気テープなどの記録媒体
これらの機器には、顧客情報や社内の資料、ログイン情報などが記録されています。ITADは、機器を手放す前後の工程でデータが外部に出ないことを担保しながら、機器の価値を最後まで生かすための仕組みです。
IT資産管理(ITAM)との関係
IT機器は、調達・導入・運用・保守を経て、最後に返却または処分されます。このライフサイクル全体を管理するのがIT資産管理(ITAM:IT Asset Management)で、ITADはその最後の段階(出口)にあたります。処分した機器は資産台帳から除却し、処分の記録と突き合わせます。出口の記録が残っていないと、台帳上は存在するのに実物がない、という状態が生まれます。
ITADが必要とされる理由
1. 初期化やフォーマットではデータが残るため
パソコンの初期化やHDDのフォーマットは、データを読み出しにくくする操作で、データそのものを消し去る操作ではありません。専用のソフトウェアを使えば復元できる場合があります(詳しくは「HDDフォーマットのやり方」)。2019年には、神奈川県の行政文書が残ったHDDが処分の過程で持ち出され、ネットオークションで転売される事件が起きました(「パソコン処分後の情報漏洩リスクと正しい対策」)。処分の委託先でデータが確実に消されているかは、委託した企業の側で確認する必要があります。
2. 委託先の管理と、消去した事実の記録が求められるため
個人情報保護法は、事業者に個人データの安全管理措置と委託先の監督を求めています。機器の処分を外部に委託する場合も同じで、「いつ、どの機器のデータを、どの方法で消去したか」を社内で説明できる状態にしておくことが大切です。そのための記録がデータ削除証明書です(「データ削除証明書とは」)。
3. 資源を有効に使うため
パソコンは資源有効利用促進法の対象機器で、使い終わった後も回収・再資源化することが前提になっています。ITADでは、まだ使える機器は中古機器として次の利用者へ渡し、使えない機器も部品や金属・樹脂などの素材として再利用します。新しい機器の製造を減らすことにつながり、企業の環境方針やSDGsの取り組みとしても説明しやすくなります(「パソコン処分で環境負荷を減らす方法」)。
ITADと「廃棄」「メーカー回収」の違い
法人がIT機器を手放す方法は、大きく3つに分けられます。
| 方法 | 主な目的 | データ消去 | 機器のその後 |
|---|---|---|---|
| 廃棄物として処理する | 廃棄物の適正処理 | 別途手配が必要になることが多い | 素材の再資源化・処分 |
| メーカー回収を使う | メーカーによる再資源化 | 出す前に自社で行う案内が多い | 素材の再資源化 |
| ITADを使う | 情報の保護と、再利用・再資源化 | 工程に含まれ、証明書が発行される | 再利用を優先し、使えないものは部品・素材に |
どの方法を選ぶかで関係する法律も変わります。廃棄物として処理する場合は廃棄物処理法、メーカー回収は資源有効利用促進法、個人データが入っている場合は個人情報保護法が関わります。法令ごとの実務は「法人パソコンの処分・廃棄方法」で整理しています。
ITADの業務の流れ
ITADの工程は業者によって細部が異なりますが、おおむね次の順で進みます。ここでは弊社の工程を例に説明します。
- 対象機器の棚卸し:処分する機器の台数・機種・シリアル番号を一覧にします。リース品やレンタル品は所有者が別なので、返却か買取かを先に決めます(「法人のリースPC返却時の注意点」)。
- 回収方法と消去場所の決定:出張回収・持込・郵送のどれで引き渡すか、データ消去をお客様先で行うか回収後に行うかを決めます。機器を社外に出す前に消したい場合は、お客様先での物理破壊(オンサイト)を選びます。
- データ消去:ソフトウェアによる上書き消去、磁気消去、物理破壊のいずれかで記憶装置のデータを消します。方法ごとの違いは「データ消去方法の選び方」をご覧ください。
- 検品とラベルの除去:機器の外観と動作を確認し、企業名・管理番号・資産ラベルなどのシールやタグを剥がします。
- リユース:商品価値のある機器は、記憶装置の交換、OSのクリーンインストール、動作確認と清掃を行ったうえで、中古機器として販売します。
- 部品取り・再資源化:再利用が難しい機器は部品ごとに分解し、メモリやCPUなどの部品はリユースに回します。基板・金属・樹脂などは資源として再利用するため、リサイクル業者に引き渡します。
- 証明書の発行:データ消去の完了を示す証明書を発行します。お客様は証明書と資産台帳を突き合わせ、除却の記録として保管します。
回収後の工程は「回収後のパソコンはどうなる?」で写真つきで紹介しています。
データ消去の基準と第三者認証
NIST SP 800-88 Rev.2
データ消去の基準として広く参照されているのが、米国国立標準技術研究所(NIST)のガイドライン「SP 800-88」です。2025年9月に改訂版のRev.2が公開されました。消去の水準を次の3段階で整理しています。
| 水準 | 内容 | 代表的な方法 |
|---|---|---|
| Clear(消去) | 通常の読み出し手段ではデータを復元できない状態にする | 上書き消去 |
| Purge(除去) | 高度な研究所レベルの手段でも復元が現実的でない状態にする | 暗号消去、磁気消去など |
| Destroy(破壊) | 媒体を物理的に壊し、再利用もデータの復元もできない状態にする | 破砕・穿孔などの物理破壊 |
出典:NIST SP 800-88 Rev.2「Guidelines for Media Sanitization」(2026年10月16日確認)
Clearで消去した媒体はそのまま再利用できるため、リユースを前提とするITADと両立します。再利用しない媒体や、故障して消去ソフトが動かない媒体は、物理破壊で処理します。
委託先を確かめるための第三者認証
委託先のデータ消去が適正かどうかは、外部の認証制度で確かめられます。国内で確認しやすいのは次の2つです。
- ADEC 消去プロセス認証:データ適正消去実行証明協議会(ADEC)が、データ消去の手順と管理体制を審査する制度です。認証を受けた事業者はADECの公式サイトに掲載されます。
- プライバシーマーク:個人情報を適切に扱う体制が整っている事業者に、一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)が付与します。JIPDECの検索ページで登録番号から確認できます。
海外では、電子機器リサイクルのR2やe-Stewards、情報の抹消を対象とするNAID AAAといった認証も知られています。国内の委託先を選ぶ場合は、まずADECの認証とプライバシーマークを公式サイトで確認すると判断しやすくなります。
ITAD業者を選ぶときの確認項目
| 確認項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| データ消去の方法 | どの方法で消すのか、方法を指定できるかを説明できるか |
| 第三者認証 | ADECの認証やプライバシーマークを、認証機関の公式サイトで確認できるか |
| 証明書の内容 | 機器の種類・型番・シリアル番号など、1台ずつ特定できる情報が載るか |
| 消去の場所 | 社外に出す前に消したい機器を、お客様先で破壊・消去できるか |
| 再利用・再資源化の流れ | 回収後に機器がどう扱われるかを公開しているか |
| 法令上の扱い | 回収した機器を廃棄物・有価物のどちらとして扱うか、説明があるか |
業者を比べるときの観点は「PC処分業者の選び方」でも詳しく紹介しています。
ITADで処分費用が無料になる理由
ITAD業者のなかには、処分費用を無料にしているところがあります。回収した機器をデータ消去のうえ中古機器として販売し、使えないものも部品・素材として売却することで収益を得ているためです。この仕組みがあるので、利用者から処分料をもらわなくても事業が成り立ちます(「パソコン無料回収はなぜ無料?」)。
ただし、無料になる範囲は業者ごとに異なります。弊社の場合、無料回収では処分料・データ消去・証明書発行が0円です。一方で、郵送の送料はお客様のご負担で、出張回収は地域ごとの台数条件を満たした場合に出張費が無料になります。また無料回収では、データ消去の方法は機器の状態に応じて弊社が選び、作業は弊社内で行います。消去方法を指定したい場合や、お客様先での作業を希望する場合は、有償のHDD・SSD物理破壊サービスをご利用ください。条件は「サービス条件一覧」にまとめています。
株式会社HAKUのITAD
株式会社HAKUは2007年に設立し、使用済みIT機器の回収・データ消去・リユース・リサイクルを行っています。ADEC 消去プロセス認証★★★(最高位)とプライバシーマーク(登録番号10590118)を取得しており、データ消去はNIST SP 800-88 Rev.2に準拠して行います。2026年9月時点で累計取引社数は15,000社を突破しました。
| サービス | 費用 | 対象・地域 |
|---|---|---|
| 郵送での無料回収 | 無料(送料のみ負担) | 個人・法人/全国 |
| 持込での無料回収 | 無料 | 個人・法人/千代田区外神田の事務所(平日9:00〜18:00) |
| 出張での無料回収 | 台数条件を満たせば無料 | 法人/東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県 |
| HDD・SSD物理破壊 | 有償 | 個人・法人/お客様先・回収後・郵送後から選択 |
| サーバー撤去・データセンター引き上げ | お見積もり | 法人/アンラックから搬出・データ消去まで |
無料回収では、お引き取りの後に「製品受領証明書 兼 データ削除完了証明書」をPDFで発行します。記載するのは機器の種類・メーカー名・型番・台数です。シリアルナンバーも載せたい場合、お客様から一覧をご提供いただければ無料で記載します(弊社で取得・リスト化する場合は有償)。棚卸しの段階でシリアル番号の一覧を作っておくと、そのまま証明書に反映できます。物理破壊サービスでは、機器の種類・メーカー名・型番・シリアルナンバーを記載した物理破壊証明書を発行します。
まとめ
- ITADはIT Asset Dispositionの略で、使用済みIT機器の回収・データ消去・再利用・再資源化までを1つの業務として扱うこと
- 初期化やフォーマットではデータが残るため、処分の過程でデータを確実に消し、証明書で記録を残すことが重要
- データ消去の水準はNIST SP 800-88 Rev.2のClear・Purge・Destroyで整理でき、委託先の体制はADECの認証やプライバシーマークで確認できる
- 業者を選ぶときは、消去方法・認証・証明書の記載・消去場所・再利用の流れ・法令上の扱いを確認する
よくある質問(FAQ)
パソコンの無料回収・データ消去はHAKUへ
無料回収(東京・埼玉・千葉・神奈川の法人)/持込(千代田区)/全国郵送
Pマーク取得 / ADEC消去プロセス認証★★★取得 / 累計取引社数15,000社突破